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爬虫類に雨が降る-Reptile waits for their days-

「岬の灯台殺人事件」          ~ 四つ子の事件簿第6話 ~

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Ⅲ章 - 4

「おーい、なんだ、さっきのは!」
 振り向くと、コンラッドが階段のほうから姿を見せ、駆け寄ってきた。廊下にいる俺たちに気づき、ジェニファーの様子に驚いている。
「襲われたのか…?」
 声を低めて呼びかけ、ジェニファー本人が弱々しいながらもうなづいたのでほっとしたようだ。
「悲鳴が聞こえたからあせったぞ。エディは?」
「犯人が非常階段に逃げたから追いかけてったよ。俺たちには犯人の顔は見えなかった」
「くそ、またか。じゃあ俺は下から調べてみる」
 またどたどたと階段に駆け戻っていくコンラッドだった。それもいいけど、これで俺への疑いを解いてくれって言いたかったのに。なんて気の短い男なんだか。
「立てるかな? とりあえず部屋に戻ろう」
 三杉が手を貸してジェニファーをゆっくりと部屋に連れて行く。彼女の部屋はウィンスローの部屋の隣だった。ジェニファーはソファーに掛けて大きく息を吐いた。
「どうもありがとう…、助かったわ」
「何があったわけ、一体」
 俺の質問に、ジェニファーは小さく首をかしげた。
「私はウィンスローの部屋にいたの。そしたら、ノックの音がして、この紙が…、ドアの下から差し込まれたのよ」
 握っていた手を広げて、小さな紙切れを俺たちに見せる。
 くしゃくしゃなのを広げてみると――。
『訪問者に注意しろ』
 という手書きの文字が読み取れた。
「私、すぐに廊下に出たんだけど、そこでいきなり後ろから抱えられて……」
「誰だったか、わかる?」
 ジェニファーは首を振る。
「後ろ向きだったから顔も見えなかったし、口も利かなかったから…」
「そうかぁ」
「でも変だね」
 俺がつぶやいた横から三杉が口をはさんできた。
「そんなメモを見ただけで君もいきなり出て行くなんて、危ないとか思わなかったのかい?」
 ジェニファーの顔が強張った。三杉はさらにたたみかける。
「君は僕たちに隠していることがあるようだ」
「そ、そうなの?」
 俺のほうがおろおろしてしまったかもしれない。三杉とジェニファーに交互に目をやる。ジェニファーは身じろぎもせずにただじっと三杉を見つめていたが、最後に両手で顔を覆って大きな息をついた。
「ごめんなさい。私、その字を見てすぐにわかったのよ。――リックのだって」
「なるほど」
 三杉はうなづいた。
「君はリックだと思ったわけだ、ドアの外にいるのが」
「ちょっと待てよ、リックなら……」
 俺だけが事情がわからない。声を上げかけたのを三杉が目で制した。そしてしばらくジェニファーを見つめてから口を開く。
「君はリックが死んでなどいないと――見つかった死体が彼ではないと気づいていたんだね、やっぱり」
「……」
 ジェニファーがハッと目を見開いた。表情がさらに固くなる。
「やっぱりって、何だよぉ」
 俺が小声で抗議すると三杉はちらっとこちらに目を向けた。
「馬鹿だな、女心だよ」
 あのね、女心がわかるなら、俺はこんな人生送ってないって。

                                         【第Ⅲ章 おわり】
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Ⅲ章 - 3 HOME Ⅳ章 - 1

・ もくじ ・

■ 登場人物
■ まえがき

第1章 サイレン
       

第2章 登頂
          

第3章 ゴールに続く道
          

第4章 鳥たちは還らない
    2   3   4     5

第5章 インタビュー
    2   3(終)

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はじめに

四つ子の事件簿シリーズです。 時期は一気に飛んで、四つ子たちは30歳過ぎになっています。その点では番外編的な位置かな。
舞台はイギリス。またいつもと違って反町の一人称で書かれています。
連載は15回の予定。では最後までどうぞよろしく。
 ・ ・ ・ ・ ・
ものすごくお待たせしました。続きをお送りします。

最新コメント

おわりに

ようやく完結です。10年以上もかかるなんて。お待たせしてしまい、申し訳ありませんでした。回数も延びて全19回となりました。          
推理ものとしてガバガバではありますが、海外ミステリーの雰囲気だけでもお楽しみいただけたら幸いです。ありがとうございました。          

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