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爬虫類に雨が降る-Reptile waits for their days-

「岬の灯台殺人事件」          ~ 四つ子の事件簿第6話 ~

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Ⅳ章 ー 2

「なんだってあんな真似を。おかげで俺は犯人扱いだったんですからね!」
「それが目的だったんです」
 ちょっと真面目な顔になって、ウィンスローは口を開いた。
「あなたにしばらく動き回ってほしくなかったんです。むしろ閉じ込められているほうがあなたにとって安全かと」
「はぁ?」
 俺は混乱した。リックには警戒される一方で、俺自身のほうも警戒しなければならない、ってのは、一体?
 しかしそこへ三杉が割って入った。
「ウィンスロー教授、ご挨拶が遅れました。お加減はもう大丈夫ですか?」
 握手に応じながらウィンスローも笑顔を見せる。
「おかげさまで。傷を縫わなかったのは、もちろん私の事情を考えてくださったからですね、ドクター」
「いえ、ご自分の身を挺してこの男を守ろうとしてくださったようで、恐縮です。そこまで心配するほどの人間じゃないんですがね。危険と馴れ合って生きてきた男ですから」
 おい。
 俺の苦悩は無視か。優雅に自己紹介しあってんじゃない! しかも勝手な評価付きで。
「ええ、それはミサキからも聞いていました。でも、リックの身に起きたーーいえ、別の誰かだとしても、ああいうことが起きた以上、危険は予想以上に近くに来ていたというわけです。私はすぐにでも手を打たねばなりませんでした」
「そうでしたか」
 三杉はうなづいて俺に向き直った。まるで二人の面接官に向かっているみたいだ。
「いいかい、一樹。君には心当たりのない歓迎ぶりだ。警戒されたり守られたりーーここまで来ると君にもわかるだろう」
「う…やっぱり、岬くん」
 居場所まで俺に偽装して、あいつ何をやってるんだ。俺は初めて来た場所でこんな目に遭ってるってのに。
 さっきのやりとりを思い出す。例によってあいつの居場所はわからない。ローバンとの会見も果たして実現するのかどうか。
 俺は疑心暗鬼になりそうだった。
 数が合わない。その原因は俺じゃないのに俺しかいない。
「せめて嵐だけでもおさまってくれたらなあ…」
「乗り手の消えた船、宿泊客ではない崖下の遺体」
 窓から外を見ながら三杉がつぶやいた。
「そして逆に行方が知れない2人ーー」
「せめてリックだけでも無事だといいんだけど。ほら、俺を警戒した理由とかさ」
 立ったままのジェニファーにそう声をかける。隣のウィンスローが先に口を開いた。
「さっきエディが来てましたよね、灯台に異変があると。どうも気になるので、せっかく『目が覚めた』わけだし上がってみようと思うんですが」
「そうね、リックのこともあるし。何か手がかりでも」
 三杉が二人に向き合った。
「じゃ、医者の同行を条件に許可しましょう」
「裏切り者め。そりゃ俺だって気になるってば」
 結局、全員で行くことになってしまった。つまり、一人にするよりも一緒が安心ということなのだ。
 俺たちは部屋を出て、廊下から灯台の吹き抜けの内側を狭い螺旋階段で上っていくことになった。3階の居住部分からさらに上へ3階分ーー床はないがおよそ1階ごとに窓がついているのが目安らしいーー上がることになる。結構な高さだ。吹き抜けのほうはなるべく見ないようにしないと。
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・ もくじ ・

■ 登場人物
■ まえがき

第1章 サイレン
       

第2章 登頂
          

第3章 ゴールに続く道
          

第4章 鳥たちは還らない
    2   3   4     5

第5章 インタビュー
    2   3(終)

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はじめに

四つ子の事件簿シリーズです。 時期は一気に飛んで、四つ子たちは30歳過ぎになっています。その点では番外編的な位置かな。
舞台はイギリス。またいつもと違って反町の一人称で書かれています。
連載は15回の予定。では最後までどうぞよろしく。
 ・ ・ ・ ・ ・
ものすごくお待たせしました。続きをお送りします。

最新コメント

おわりに

ようやく完結です。10年以上もかかるなんて。お待たせしてしまい、申し訳ありませんでした。回数も延びて全19回となりました。          
推理ものとしてガバガバではありますが、海外ミステリーの雰囲気だけでもお楽しみいただけたら幸いです。ありがとうございました。          

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